大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成2年(行ウ)16号 決定 1991年7月12日

申立人

林廣治

丸尾雅徳

黒宮雪彦

鈴木正美

大道寺将司

大竹紀歳

稲葉昇

筒井修

伊藤悠子

辻田雄一

向井孝こと

安田長久

後藤護

松沢哲成

長谷川修児

永井美由紀

安島敏市

水田ふうこと

生和佐知子

上野のぶよ

西巻信行

大道寺幸子

吉川恵

竹谷俊一

横尾一

山崎博之

松沢信子

貴志哲也

放出吉倫

宮崎英子

被参加人(原告)

甲野一郎

相手方(被告)

東京拘置所長水上好久

補助参加申出人

林廣治

外二七名

(別紙補助参加申出人目録記載のとおり)

本案の原告

甲野一郎

本案の被告

東京拘置所長

被告指定代理人

開山憲一

外四名

主文

被参加人と相手方間の当庁平成二年(行ウ)第一六号行政処分取消請求事件につき、申立人らが被参加人を補助するため参加することを許可する。

本件補助参加の申出に対する異議の申立てによって生じた費用は、相手方の負担とする。

理由

一本件事件記録に徴すると(なお、本件は、相手方に訴状が送達され、被参加人及び相手方の双方から答弁書その他の準備書面が提出されている外、書証及び人証の申出がされているが、未だ口頭弁論期日は指定されていない。)、本件の事案は、死刑判決確定者として東京拘置所に拘置されている被参加人が、相手方に対して、所定の様式の「外部交通許可申請書」をもって、申立人ら外一三一名との外部交通(面会又は信書の発受)の許可の申請をしたところ、相手方は「拘禁目的に反する」との理由でこれを不許可とする旨被参加人に告知したので、被参加人が右不許可処分の取消しを求めたものである。そして、被参加人が今までに提出した訴状又は準備書面には、右不許可処分は、監獄法九条が準用する同法四五条一項、四六条一項等に違背し、又は相手方の裁量権を濫用し、若しくはその範囲を逸脱した違法なものである旨の記載があり、さらに、相手方の本案前の申立てに対する反論として、被参加人は、右不許可処分の直接の効果として、申立人等右申請によって外部交通をしようとする者らとの外部交通が認められないこととなっており、また、右申請によって外部交通をしようとする者らも、右不許可処分の直接の効果として、被参加人との面会及び信書の発受が認められないこととなっているから、右不許可処分は被参加人の権利利益に直接の影響を与えている旨の記載がある。相手方が今までに提出した答弁書その他の準備書面には、本案前の申立てとして、相手方は一般に死刑判決確定者に対しては相手方所定の基準に該当する者との個別具体的な面会又は信書の発信につき、その都度、許可決定をする取扱いとし、右取扱いを適正に実施するに当たって、あらかじめ死刑判決確定者が外部交通を希望する者らを承知し、その者について右の基準に該当し外部交通を認めることが相当であるか否かを調査、把握するために、被参加人主張の外部交通許可申請書を提出させることとしているものであり、被参加人についても同様の取扱いをすべく、外部交通許可申請書を提出させたものであって、被参加人主張の不許可の告知は、右申請書に記載の者について所定の基準に該当しない旨を告知した事実行為に過ぎず、したがって、未だ被参加人の権利ないし法律上の利益に直接影響を生じさせるものではないから、取消訴訟の対象となる処分に当たらない旨が記載されており、また、本案の主張として、死刑判決確定者の法的地位及びこれに対する拘禁の目的、性格の特殊性に鑑みて、その外部交通を相手方が定めた範囲に制限することは合理的であり、監獄法の許容するところであるから、右不許可処分は適法である旨が記載されている。

申立人らは、いずれも被参加人がした外部交通許可申請において、外部交通をしようとしている者らであり、相手方がした右申請に対する不許可処分により、被参加人との面会又は信書の発受信が妨げられているから、右不許可処分の取消しを求める本件訴訟の結果に利害関係を有する旨主張する。補助参加の申出に対する相手方の異議申立ての理由は、別紙補助参加申出に対する異議申立書記載のとおりであり、要するに、申立人らが本件訴訟の結果に利害関係を有するものではないとするものである。

二ところで、行政事件訴訟法七条によって準用される民事訴訟法六四条の「訴訟ノ結果ニ付利害関係ヲ有スル」とは、訴訟の結果、すなわち、判決主文によって示される請求についての裁判所の判断の結果について、私法上又は公法上の権利関係に法律上影響を受けるという法律的な利害関係を有することを意味するものである。そして、申立人らは、いずれも被参加人が外部交通許可申請書をもってした外部交通(面会又は信書の発受)の申請によって外部交通をしようとしている者らであって、被参加人を補助するために本件補助参加の申立てをしたことに照らせば、右申請に対して相手方がした不許可処分の性質について被参加人と同様の主張をするものと認められるところ、右主張を前提とすれば、申立人らは、右不許可処分の取消しを求める本件訴訟のおいて被参加人が敗訴判決を受ければ、被参加人と面会をし又は被参加人との間で信書の発受を行うという公法上の権利関係に法律上影響を受けることになるものというべきである。

相手方は、右不許可処分について、これは相手方と被参加人との間の限定された法律関係において、相手方が外部交通の許否の判断を行うべく、あらかじめ一般的な取扱いに関して、行政庁としての一応の基準を被参加人に告知したというに過ぎないから、申立人らの法律上の地位に影響を及ぼすものではない旨主張するが、本件においては、このような相手方の主張の前提である右不許可処分の法的性質ないし処分性の有無自体が争点の一となっているのであるから、右のような理由によって、申立人らが本件の結果に利害関係を有するものではないとすることはできない。また、相手方は、右不許可処分が被参加人の信書発信の権利に影響を及ぼすことがあるとしても、申立人は、被参加人が申立人らに信書を発信した場合にこれを受け取ることができるかもしれないとの期待(反射的利益)を有するに過ぎないので、本件の訴訟の結果により法律上の地位に影響を受けるものではないとも主張するが、被参加人及び申立人らは、右不許可処分によって、被参加人と申立人らとの間の信書の発受のみならず、面会についても不許可とされたとしているのであるから、被参加人の信書の発信のみを取り上げて、右不許可処分による申立人らの権利関係に対する法律上の影響の有無を論ずることも失当であるというべきである。

三よって、申立人らは本件に補助参加する利益を有するものであるから、本件補助参加申立てを認容することとし、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九四条、八九条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官中込秀樹 裁判官石原直樹 裁判官長屋文裕)

別紙<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例